見積作業を分解すると「探す・作る・確認する」になる
引き合いが来るたびに起きることを、一度整理してみます。
担当者を探す。過去の図面フォルダを掘り返す。似た案件がないか記憶をたどる。前回の単価表をExcelで確認する。材料費の最新値を調べる。それらをまとめて計算して、ようやく数字が出る。
この一連の流れを分解すると、三つのブロックになります。
- 探す ── 過去図面・類似案件・単価・納期実績を引き出す
- 作る ── 数字を組み合わせて見積書のドラフトを作る
- 確認する ── 数字が正しいか、顧客の条件に合っているか、リスクはないかを判断する
AIが力を発揮しやすいのは「探す」と「作る」の部分。「確認する」は人の仕事のままです。
AIが得意なこと:「探す」と「下書きを作る」
過去の案件データが社内のどこかに残っていれば、AIは「これに似た案件はあのフォルダにある」と見つける手助けができます。また、「SUS304・穴径5mm・数量100個」という仕様を伝えると、過去の実績をもとに見積の下書きを作ることができます。
繰り返しパターンのある仕事──「毎回ほぼ同じ構造で、違うのは数字や材質だけ」──が最もよく効く領域です。
一点、大切なことがあります。AIが出す数字はあくまで「下書き」です。根拠になるデータが古ければ結果も古い。材料費が先月から上がっていても、教えなければAIは知りません。「AIが出した = 正確」ではありません。
人が握るべきこと:「最終判断と責任」
値引きをどこまでするか。今の工場の込み具合でこの納期を本当に約束できるか。この顧客とこれまでどんな取引をしてきたか──これは過去データだけでは決められない判断です。
また、見積書に社印を押す行為そのものが、会社としての責任を引き受けることです。AIにはハンコが押せません。判断と責任は、人が握る。ここは変わりません。
フローで見ると、こう変わる
「探す・作る」をAIが担い、「確認・判断・送付」を人が担う。この二段構えが、現実的な分け方です。
ただし、短縮できるのはAIに渡せるデータが社内に整っている場合です。データが散らかっているなら、まずそこから整えることになります。ツールを入れる前に「うちのデータはどこにある?」を確認する──これが抜け落ちると、導入してから「思ったより使えない」になります。
まず何から手をつけるか
AIツールを探す前に、自社の見積作業を手順として書き出してみてください。ノートに5〜6行で構いません。
長野・諏訪の製造業の現場でよく聞くのは、「そもそも何から始めればいいかわからない」という声です。最初の一歩は大きくなくていい。「今の見積作業の手順を書き出す」──それだけで、次にやるべきことが見えてきます。
「毎回、類似案件を探すのに時間がかかっている」と気づいたなら、そこがAIの入り口です。ツールは入り口が決まってから選ぶ。その順番が、失敗しないコツです。